石けんはクスリだった?
和名シャボンはいったい何語から来たのか?
ポルトガル語 sabao かスペイン語 jabon (古語では Xabon )か、はたまたラテン語か。
様々な説があり、江戸時代には手紙、書籍、記録などにシャボンの文字がいろいろ見えます。
その中のひとつとして徳川家康の遺品の中に、シャボンが十壷あったという記録があります。
壷とあるので洗たく用の軟石けん(カリ石けん)と思われますが、
シャボンはこの頃財宝のひとつだったと言えましょう。
現代では、石けんは身体を洗ったり衣類の洗濯用とするのが一般的な考えです。
でも、壷にしまいこんで取っておくほど貴重なものを、洗濯用などに使うでしょうか?
答えはノーです。
当時の洗濯業者はアクを使い続け、庶民はぬか袋から離れませんでした。
つまり、石けんは薬用用に内服されていたのです。
1820年頃の日本では、ベネチア石けんとロンドン白石けん(ウィンザー石けん)が
最上品とされていましたが、後者は牛脂90%とオリーブ油10%が原料で、
ヨーロッパでも高級品でした。
もともと食べられるものなのですから内服もできるということです。
ネズミも昔の良い石けんはかじっていたそうですよ。
ちなみにベネチア石けんの『味』は香り良く下を刺激せず、
削ると雪のように白く美しく、乾燥した酪(牛乳)をかんでいるようだとホメちぎっています。
けれど黒っぽいものや灰色っぽいものは、
味わいが苛烈で舌に刺激的。『内服して害あり』としています。
現在では服用としての石けんはほとんど見る機会がありませんが、
このような歴史があると知ると、石けん一つとっても奥深いものがありますね。
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